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仕立て屋と恋
橙色の白熱球の光が、ライトスタンドの傘の下から漏れ出して室内を照らし出していた。
それでも尚暗いのは、窓から見える筈の太陽が疾うに沈んだせいか。或いは、こんな冷たいコンクリートジャングルに一軒だけ建っている、お伽噺にでも出てきそうな仕立て屋のせいか。
店内にはお洒落なジャズがかかっていて、ほんのりと暖かい空気と混ざって睡魔を誘う様だ。
その中で黒髪の彼女は赤色の瞳で、布切れやわら半紙やらが散乱する床を見詰める。無闇に歩くとそれらのものを踏んでしまいそうで、彼女はこの店に入ってから細心の注意を払いながらなんとか片付いている小さなスペースに立っていた。
―掃除はしてるのかしら。
そんな事を内心で呟く。薄暗いせいで分かりづらいが、良く見るときらきらと電球の光を反射して埃が舞っている。彼女が暗がりに視線を彷徨わせていると不意に、目の前に深海の青色が飛び込んできた。深い紺碧にスパンコールがあしらってあるそれはきらきらと店内に浮かんでいる埃より輝いている。意識を青色に戻して見てみると、それは海外の映画で出てきそうな真っ青なドレスだった。
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