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あれから3時間が経った。
「じゃ、そろそろ。私達用事があるから……」
そう言って、紅玲と葵が立ち上がる。
……と。
「ねぇ、タツミさんに合わせて?」
礼緒菜が、いきなりそう言った。
タツミの名は、恋バナの時に出てきたのだ。
紅玲が一瞬きょとんとして、次に携帯でメールを送る。
それからしばらく経った。
「紅玲」
男の声。声の主は、眼鏡スーツ。長身の男、タツミだ。手には、洋菓子の入ったケーキ箱が2つ。ケーキ箱には『ETERNIITY』の黒文字と赤いバラの絵。
「タツミさん」
「わっ、お兄ちゃん、それ花ちゃんのケーキ?」
「ああ。はい、葵」
紅玲がニコニコ笑って迎え入れる。
タツミがケーキ箱の1つを葵に渡した。
「よぉ。紅玲ちゃん、葵ちゃん」
にっかり笑って葵ちゃんの近くまで行く男は、タツミよりも更に高く、がっしりした体格をしている。
「彼は、ジンさん。タツミさんと同じホストで、葵ちゃんの彼氏」
そう言ってから、ケーキ箱を指差し。
「ホストクラブのケーキはバーテンダーの花ちゃんの手作りなの。人気あるのよ」
きょとんとする俺に、紅玲がクスクス笑いながら教えてくれた。
「断っておくけど、ホスト営業の色恋のカップルじゃないからね。本命だからね」
そう言って、釘を刺すのも忘れない。
「葵、コイツは?」
ジンが俺をじろりと睨む。
「紅玲お姉ちゃんの従弟の相原さんだって」
ニコニコ笑って紹介してくれる。
「……よろしく」
「よろしく」
「ねえ、相原さんとタツミさんって、そっくりよね?」
不意にした礼緒菜の声に、張り詰めた空気が破れた。
「あら、ホントだわ」
「ねえ、並んで見せて?」
「お兄ちゃん、眼鏡取ってねぇ♪」
女性陣のリクエストに答える。
店の壁を背中にして2人で並ぶ。182cm、同じ背丈、そっくりな髪型。違うものは眼鏡の有無。
女性陣が満足したところで、帰ろうとすると。
「タツミさん、お手合わせお願いできますか?」
礼緒菜が、とんでもないことを言い出した。
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