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雨の日の出会い (キャプテン・ライドン サバアラム)
この時期、この辺りの地域はちょうど雨季にあたり、雨の降る日が多かった。
そして雨が降った日はやはり客足が伸びない。
恒星間航行を可能にする技術があったところで、酒でも飲みに繰り出そうという人の気分は、雨天ひとつで億劫になってしまうのだった。
雨脚は次第に強まり、僕の店の客足もまばらになる。
店内にいるのは、僕と、ピアニストのアッシュと、僕と同じ様に夜の商売をしていながらも「この雨だもの。まるで商売にならないわ」と愚痴りながら飲みに来たシーナと、もうかれこれ1時間ほど3人きりだった。
僕は手持ち無沙汰にグラスを磨いて時間を潰し、アッシュは店内のピアノで随分とクラシックなジャズを弾き続けて、シーナはずっと手帳にペンを走らせて何か書き込んでいた。
さて、どうしたものか。
今日はもうウチの店も早仕舞いにしようか……などと考え始めた矢先、ドアの開く音がした。
「いやぁ、ひどい雨だねぇ。参った参った」
そう言って店内に入ってきたのは、年の頃は50後半、60くらいだろうか。真白な頭髪を短く刈り込んだ初老の男性。
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