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恋のはじまり
「ゆうくん、今日からここがあなたの城よ」
姉さんが指差す先には築二十年くらいの白いアパートの一階にある一〇二号室。
姉さんといっても血はつながっていない、新しい父親の僕より四つ年上の連れ子。
「あまり広くはないけど、高校生が独り暮らしする分には充分でしょ。お姉さんがゆうくんの為に一生懸命探したんだぞ」
僕は今日からここで独り暮らしを始める。今日から炊事も洗濯も掃除もゴミ出しもすべて一人でやらなければいけない。頭の中では理解しているのだけど、まだ現実味が乏しく感じる。やはり実際にやってみないと分からないのかな。
先月までは母親と二人暮らしだったのが、今月に入り一度に父親と姉ができ、母親は新しい父親が住む家に入る為、通学の関係で僕は独り暮らしを強いられた。
明日は高校の入学式。だのに空は鉛色。今にも花散らしの雨が降り出しそう。
夜には実際、雨が降ってきた。満開の桜は散ってしまうのだろう。
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