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それだけでなく、角を曲がってきたであろうオバちゃんが運転するチャリに背中を轢かれてしまった。
「くぅ~、マジかよ! 痛ぅー! サイテー! カッコわる!」
僕が水溜りから起き上がるとオバちゃんが「大丈夫」とか訊いてきたが、大丈夫な訳がない。新品の制服はビショ濡れ、顔も手もビショ濡れ。もうサイアクだあ。
立ち上がる瞬間目の前にタオルハンカチが突き出されてきた。
僕はオバちゃんかなと思って顔を向けるとさっきの可愛い女の子がいたので、思わず「え?」って言ってしまった。
反射的にハンカチを受け取ってしまったけど、カッコ悪いところをみられた。
「キミも入学式へ出るの? でもその格好じゃ無理そうだね」
女の子はそう声をかけてくれた。
「これ、やっぱり返すよ。汚しちゃあ悪いからさあ」
とは言ったものの水溜りの水ですでにハンカチは汚れてしまっていた。
「いーよー、大丈夫だから使って。え~っとキミ名前は?」
「ありがとう。僕、<結城優哉>。君は?」
「えっ、キミも<ゆうき>なの? 私も優木、<優木結>っていうの。よろしくね、優哉くん」
「ああ、よろしく。えっと優木さん」
「結でいいよ。なんか自分の苗字に”さん”を付けると変な感じしない?」
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