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第六章 色黒くん再び
縦横100メートルくらいある中庭には、背の低い照葉樹に囲まれている、大きなもみじの木がある。
僕がよくつかっているのは、通称もみじの中庭。
他に中庭は9つあり、同じようにそれぞれクスノキ、イチョウ、竹などの大木が照葉樹に囲まれて存在する。
青いもみじの中庭を足早に移動していると、再びあの人に呼びかけられる。
「……落としたよ。」
今度は筆箱を落としていた。
「…!ありがとう、また拾ってくれて。」
じっとこの前みたいに見ていた。
今回、瞳が穏やかで優しいことに気づいた。
以前と比べて少し自然に話せる。人見知りの激しい自分にとって、めずらしいことだ。
「…よかった。」
「いつもここにいるの?」
「…うん。」
「あ、もしかしてお昼だった?邪魔したね。」
「…ううん。ぜんぜん…そんなことない。」
「えっと、明日もいる?よかったら…一緒にここで食べたい…な。」
「昼はいつも…いるよ。来てくれたらうれしい。」
「うれしい」の素直な言葉に、軽く照れた。
彼は口数が少ないけれども、力がある。
「!!じゃあ、明日また会おうね。僕はシキっていうんだけど、君は?」
「…ヒロっていう。」
完全に打ち解けたわけじゃないけど、ヒロとは仲良くなれそうな気がする。
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