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第八章 木陰で待つ
朝起きると、昨日の気持ちほどの沈みはなかったけど、お昼の時間の一時間前から、
木の下でヒロが来るのを待つことにした。
適当に図書館から文庫本を借りて読む。
こんな時間は近くから先生の声が聞こえるだけ。青々したもみじの木によりかかっていた。
「…や、今日は早いね」
そっと背後の死角からあらわれた。
「うん、まあね。」
これといって会話は続かず、お盆の上の学食をモグモグしていた。
話しかけられたくないから、間ができないように。自分のしていることにも嫌な気持ちになる。
今日は早くからいたのに…
食べ終わって、リュックを肩にかけながら別れようとしたら、ふいと澄みわたる声で、
「また話してね……、大丈夫だから…。」
と、
じっとぼくをみつめて静かに言った。
「…うん。」
素直なまっすぐな言葉に、僕も素直に答えられた。
ありがとう。
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