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第十二章 忍び寄る風
少しずつだけど、2人とは段々仲良くなっていると思う。
爽やかな守屋と、物静かで落ち着きのあるヒロに、よい影響をもらっている。
暑くなってきた7月、クーラーが効きすぎて肌寒い講義室で、英語の用具をリュックから出していると、
「おまえ、必修の語学をサボる気かー!!」
「ちょっと用事だっつーの。てかそれは大学の風紀の仕事じゃないだろ!」
「口答えするな、わざわざ尻をたたいてやっているのに。」
「結構だ!」
廊下から強い口調の会話が聞こえてきた。
顔を向けると、言い争いは続いていたが、知り合い同士の口喧嘩のようだ。
まあ、一年でさっそくサボるのはどうかと思うがと、風紀に賛成する。
そうしているうちに、風紀の前にさっそうと立ちふさがる人物が現れた。
「木戸、風紀には出席命令する権限なんてないはずだが?高校のまま、停止しているのか?」
と大人びた声でため息をもらす、男が言った。黒髪はまゆにかかるくらいで、ゆるくワックスでセットしていた。
「委員長さん。あなたにも、注意する権限なんてもうないですよ。」
と笑顔で木戸なるものが言い返す。
……おぉ、なんてピリピリした会話だ…。
僕以外の人もこの殺伐とした感じを肌で感じるようだ。
数秒2人は見つめあったほど、風紀はやんちゃ君の腕をつかんで講義室に戻っていった。
僕はその二人の後ろ姿に目がいっていたが、会長がこちらに少し視線をむけていたことには気づかなかった。
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