第十二章 忍び寄る風

1/1
前へ
/154ページ
次へ

第十二章 忍び寄る風

少しずつだけど、2人とは段々仲良くなっていると思う。 爽やかな守屋と、物静かで落ち着きのあるヒロに、よい影響をもらっている。 暑くなってきた7月、クーラーが効きすぎて肌寒い講義室で、英語の用具をリュックから出していると、 「おまえ、必修の語学をサボる気かー!!」 「ちょっと用事だっつーの。てかそれは大学の風紀の仕事じゃないだろ!」 「口答えするな、わざわざ尻をたたいてやっているのに。」 「結構だ!」 廊下から強い口調の会話が聞こえてきた。 顔を向けると、言い争いは続いていたが、知り合い同士の口喧嘩のようだ。 まあ、一年でさっそくサボるのはどうかと思うがと、風紀に賛成する。 そうしているうちに、風紀の前にさっそうと立ちふさがる人物が現れた。 「木戸、風紀には出席命令する権限なんてないはずだが?高校のまま、停止しているのか?」 と大人びた声でため息をもらす、男が言った。黒髪はまゆにかかるくらいで、ゆるくワックスでセットしていた。 「委員長さん。あなたにも、注意する権限なんてもうないですよ。」 と笑顔で木戸なるものが言い返す。 ……おぉ、なんてピリピリした会話だ…。 僕以外の人もこの殺伐とした感じを肌で感じるようだ。 数秒2人は見つめあったほど、風紀はやんちゃ君の腕をつかんで講義室に戻っていった。 僕はその二人の後ろ姿に目がいっていたが、会長がこちらに少し視線をむけていたことには気づかなかった。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加