第十四章 君は

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質問には答えることのないまま、強く抑えつけた手を肩から上腕二頭筋、ひじ、手首へとすべらして、両手をにぎる。 腕をなでられる間、抵抗はできたはずだが、先ほどの押し倒すような力とはうってかわった優しい触れ方に、とまどって動けなかった。 そして、にぎられた両手をすっと頭の上にもっていかれ、腕をクロスさせられ、片手でおさえられる。 危機を感じて逃げようとするも、動く前に委員長の顔がせまってきて、耳に唇が当てられた。 やさしくふれた唇。 恐怖も混じりながら、それは数十秒にも感じられた。 このままさらに続けられると思った行為は、ふと止まり、言葉が耳に入れられる。 「風紀に気を付けろ。」 そう一言ささやくと、拘束していた手足をはなし、小会議室をあとにした。 ほへ? ドアがしまる音で、緊張がとけたのか、呼吸が酸素をもとめて荒くなる。 そしてしばらく両手を机の上にバンザイのまま、ドアの先を見ていた。
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