第三章 次の日

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点になっているカバの目を見ていたら、後ろから頭に手がそっとおかれた感触を感じた。 「かわいいだろ?そのカバ。」 上からの澄んだ声に顔をむけると、にっと笑った顔があった。 耳に伝わる振動と、優しくふれられた感触に不覚にもドキッとした。 「…うん。ゲーセンでゲットしたの?」 「いや、買ったんだよ。700円くらいかな?」 「小さいのに結構するんだ!」 「既製品じゃないからな。」 「え、手作り!?」 「ああ、徳(とこ)足(たり)通りにある手芸の店で開いてた手芸マーケットで売られてた。」 「そういうマーケットがあるんだ。」 「うん、というか意外だな。梅ちゃんってぬいぐるみに詳しいイメージがあったんだけど、そういう店は知らない感じ?」 知らないのかな?ていうかぬいぐるみが好き前提にいつのまにかなっているけど。 確かにぬいぐるみ好きだけど・・・ていうかイメージからわかるもの?? 「んと、ぬいぐるみは好きでもないし嫌いでもないよ。」 つい、恥ずかしさから嘘を言ってしまった。 目線を斜め右下にしながら発したと同時に、うわっ、最悪。これで話が途切れると感じた。 しかし、彼の表情はにやけた。 「嘘つけ。俺のカバちゃんをもの欲しそうな目で見てたくせに。」 「はっ?見てない。」 「熱く見つめてたくせに認めないのか?かわいかったで。」 「かわいくない。」 でも、守屋が自分の嘘を見抜いてくれたのは嬉しかった。やっぱり知られるのは恥ずかしいけど。 …ん?ていうか「梅ちゃん」って僕のこと!? 梅村からとったか。
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