13人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな庶務係に若い男の子が入ってきた。
愛想がない、笑顔がない、返事がない…とないない尽くしの久住誠也21才。
接客業なら、即クビになりそうなヤツ。とにかく暗いし、とにかく気にくわない。
前髪は目が隠れるほどに長くて、全く表情がわからない。
どうして採用されたのか、さっぱり社長の心が読めない。
橘さんは、わらび餅を取り分けて、久住にも渡した。
「はいどうぞ」
「………」
『また無言…最悪…。全く最近のガキは…』
私は辛うじて口に出さなかった。
「久住くん、仕事、少しは慣れて来た?」
橘さんが、みんなの輪に入れようと話しかけた。
『どうせ、反応ないんだから、声なんかかけなきゃいいのに…見てるこっちがイライラする』
「…はい、少しは…」
「年上の女ばかりだから、若い久住には苦痛だよね~。社長も別の部署においてくれたらいいのにね?」
「いや、社長は雑用が多いのに、男手がないのはって、ここに配属になったみたいです」
『へー少しは喋れるんだ…声、初めて聞いたかも…』
休憩が終わると橘さんが、
「さやかちゃん、久住くんに備品庫のことを教えてあげてくれない?」
「えー?!私?カナちゃんじゃだめなんですか?」
「昨日、カナちゃんだったでしょ?だから、今日はさやかちゃん!」
「えー!!!!」
『本当はイヤだけど…』
「はーい。わかりました!じゃあ、行くよ!」
「……」
「声、出せないの?」
もう限界、ついに心の声が漏れた。
『男のくせに、ハッキリしろっての!』
最初のコメントを投稿しよう!