ときめきは突然に

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そんな庶務係に若い男の子が入ってきた。 愛想がない、笑顔がない、返事がない…とないない尽くしの久住誠也21才。 接客業なら、即クビになりそうなヤツ。とにかく暗いし、とにかく気にくわない。 前髪は目が隠れるほどに長くて、全く表情がわからない。 どうして採用されたのか、さっぱり社長の心が読めない。 橘さんは、わらび餅を取り分けて、久住にも渡した。 「はいどうぞ」 「………」 『また無言…最悪…。全く最近のガキは…』 私は辛うじて口に出さなかった。 「久住くん、仕事、少しは慣れて来た?」 橘さんが、みんなの輪に入れようと話しかけた。 『どうせ、反応ないんだから、声なんかかけなきゃいいのに…見てるこっちがイライラする』 「…はい、少しは…」 「年上の女ばかりだから、若い久住には苦痛だよね~。社長も別の部署においてくれたらいいのにね?」 「いや、社長は雑用が多いのに、男手がないのはって、ここに配属になったみたいです」 『へー少しは喋れるんだ…声、初めて聞いたかも…』 休憩が終わると橘さんが、 「さやかちゃん、久住くんに備品庫のことを教えてあげてくれない?」 「えー?!私?カナちゃんじゃだめなんですか?」 「昨日、カナちゃんだったでしょ?だから、今日はさやかちゃん!」 「えー!!!!」 『本当はイヤだけど…』 「はーい。わかりました!じゃあ、行くよ!」 「……」 「声、出せないの?」 もう限界、ついに心の声が漏れた。 『男のくせに、ハッキリしろっての!』
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