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ううん、ケンカじゃない。さっきも言ったじゃん。桑名しえりのせいだって。
そう、美紅が来るまでは桑名しえりがクラスの女王だったの。
しえりが美紅に話しかけるようになって、美紅も1軍のやつらと一緒にいることが多くなって、彼氏もできて。
うちもその頃バイト始めて忙しかったし、少しずつ距離ができちゃった感じかな。
だから死ぬ前の美紅のことは、ほとんど知らない。
え!? やだっ、やめてよ先生!
……最悪。
こんなの、誰にも知られたくなかったのに。
そんなマジな顔しないで。大丈夫だよ。
毎回、そんなに深く切ってないんだから。
死にたくてやってるんじゃないの。むしろその逆。
でも、美紅も初めてこの傷を見た時、先生と同じような顔で心配してくれたっけ。
なんか思い出しちゃった。
……ううん。違うよ、美紅が死んでからじゃない。
もう、ずっと前から。
初めて切ったのは、十歳の誕生日。
ゴミだらけの汚い部屋の押し入れで、コンビニで買った苺のケーキを食べながら。
今でも覚えてるよ。
甘ったるい生クリームと、自分の血が混ざり合った、生臭いにおい。
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