■16時30分~ 3年特進クラス 井森瑠衣

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美紅は砥上とかしえりとか 一軍の派手なやつらとしか話さなくなったし うちはバイト始めて忙しかったし。 うん……嘘。 今のは言い訳。 ほんとは、美紅から話しかけてくれるのを待ってた。 自分からは無理。 だって、美紅がうちを見る目に、しえりたちみたいに見下す色がにじんだらって思うと、死にたくなるもん。 美紅がしえりをどう思ってたか、本当のところはわからない。 実際はそんなにうまくいってなかったんじゃないかって思う。 だって砥上としえりって、中学の頃は付き合ったり別れたりを繰り返してたらしいし。 今カノと元カノが親友とか、ありえないでしょ? でもわかんない。ぜんぶうちの妄想、いや願望かも。 美紅は本当はあいつらと離れたいけど 強引にくっつかれて逆らえないだけだって。 そう思いたいだけかもね。 実際、みんなに取り巻かれて笑ってる美紅は うちと二人でいる時より何倍もキラキラしてた。 美紅はさ、クイーンてゆうより、クラスのプリンセスだった。 可愛くてピュアで、貴族からも平民からも愛されて。 美紅を見てると、昔大事にしてたお人形を思い出すんだ。 髪の毛が長くて、小さい櫛がセットになってるやつ。 アパートの汚い部屋の押し入れで、 人形の髪をとかしたり編んだりしながら 塔の中に閉じ込められたラプンツエルごっこをしてたんだよね。 あれ? でもそうなると、美紅がプリンセスで うちが魔女ってことになっちゃうね。 ……うん、でも うち、魔女の気持ち、わかるかも。 魔女はきっと、ラプンツェルを自分だけのものにしておきたかったんだ。 外の世界を知らないラプンツェルに、自分だけを見ててほしかったんだよ。 誰にも渡したくないから、大切だから 宝物みたいに塔の中に隠してたんだ。 愛してたから。 魔女を捨てて外に出たいなんて思うから 窓から落ちて死んじゃったんだよ、きっと。 そういえばあのお人形 どこにいっちゃったんだろう?
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