■17時00分~ 3年特進クラス 砥上晶

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ああ、はい。 じゃあ、砂糖なしのミルク多めで。 ありがとうございます。 なんかこの保健室、冷えますよね。日当たり悪いからかな。 でも実際、どうなんですかね? 責任逃れするわけじゃないけど 俺、美紅が死んだことに 本当は深い理由なんてない気がするんですよ。 先生。 もし目の前に、何の苦痛もなく死ねるボタンがあったらどうしますか? 俺だったら、何も考えずに押しちゃうかもしれないですね。 だって実際、俺の人生のピークって今じゃないですか。 うちの高校、地元じゃそこそこ有名ですけど 周りから『スベ専』て呼ばれてるんですよ。 スポーツ推薦か、本命の滑り止め専門の高校。 俺ら特進科は一応、底辺の普通科よりマシですけどね。 それでも第一志望の有名校落ちた奴らの集団ですから。 どうせこのあと二流の大学行って 適当な志望動機ひねり出して適当な会社に入って なんとなく結婚して どんどん老けてババアになってく女と 大して可愛いとも思えないガキを死ぬまで養いながら 昔は見下してた勉強だけしかできない奴らに顎で使われて ぺこぺこ頭下げて生きてくんでしょ? 地獄ですよ。 今なら俺、こんな狭い世界の中だけですけど キングのまま死ねるじゃないですか。 所詮41匹の負け犬の中のトップですけどね。 ……夢がない? そうですか? 俺なりに精一杯前向きですよ。 野球部辞めたのも、受験勉強に手を抜いてうちの高校に来たのも。 その方がいつまでも自分の可能性を信じてられるじゃないですか。 『あのとき本気出してれば甲子園行けたのに。 プロになれたのに。 東大行って一流企業で働けたのに。 こんなにつまらない人生じゃなかったのに』って。 そんな夢の見方があってもいいと思いませんか?
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