花束を抱えて

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花束を抱えて

去年より早く咲き始めた桜はもう満開で、風が吹く度に はらはらと散っていく。 今年も会社の花見は遠慮しようと ぼんやりと考えながら、幼馴染の花屋で注文していた花束を受け取りに行く。 「いらっしゃいませ西條さん!ご用意できてますよー」 「ありがとう。綺麗だな…あいつも喜ぶよ。」 「甘々で愛されてていいですねぇ…僕もお会いしてみたいですぅー。 はい、どうぞ…。 ありがとうございました!」 興味津々のハートマークの瞳の店員に苦笑いしながら代金を払い、礼を言って店を後にする。 「ちょっとマモ君!あの人に余計なこと言わないでちょうだい。」 「え、マスター…僕何かマズイこと言いましたか?」 「マズイも何も……あ、お客様よ!この話は…」 それきりマスターは「その話はNG」とばかりに接客に走って行った。
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