愛の真実 (※改稿:2017.08.14)

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※ ※ ※  告別式から2日後。  大池と春山はコネをすべて使用して、警察署へと来ていた。犯人――木嶋隆将に会うためだ。  面会室でそわそわとしていると、扉が開き、やつれた男が警察官につれられて入ってきた。  木嶋隆将だ。  ワイドショーなどで流れていた写真の面影はまったくなく、頬がこけ、顔色は真っ白で、まるで別人のようだった。  隆将は黙って椅子に座ると、うつむいたまま、虚ろな瞳を床に落としている。  ――やばい。話の切り口が見つからない。  何かがおかしいと、とにかく真実が知りたいとここまで来たものの、いざ何をすればいいのかがわからない。  だからスクープが撮れないのだとわかってはいたが、ここまで不慣れとは自分でも思っていなかった。なんとも情けない。  反して、さすがはやり手。落ち着いた様子で春山が「何か、隠していることがありますよね?」と切り出す。いきなり意表を突く言葉に、隣の大池はぎょっとして先輩の顔を覗き込んだ。その表情は緊張と興奮の狭間で揺れ、上向いた唇は小刻みに震えていた。
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