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「……お話することは、何もありません」
ぽつりと、隆将が呟く。
すべては報道されている通りです、と。
「……本当に、そうなんですか?」
ゆるゆると隆将が顔をあげる。
初めて視線が交差する。
混濁した瞳の奥に、何かが隠されているような予感がした。
「――笑っていたんです」
「……え?」
「遺影を持って、笑っていたんです」
それは賭けに近かった。
一瞬しか見えなかった、幻かもしれない。
だけど、大池にとってのあの一瞬が、全ての真実のように思えて仕方なかったのだ。
隆将が、がくりと肩を落とす。
その目から、涙が一筋流れた。
「真実を、聞かせてもらえますか?」
春山が促す。
そして真実が語られる。
今日まで黙ってきた、本当の出来事が。
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