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部屋の窓を開けると、蛾が一匹入り込んできた。ぶぅんと羽音をたててよろよろと部屋の中を右往左往する。そいつすら自分を嘲笑っているかのように見えて、イライラする。
ハエたたきで床に叩きつけ、気絶したところを踏みつけた。
ぐちゃり。
血が飛び散る。
何度か踏みにじると、蛾だった物体は見る影もなくぐちょぐちょになり、ただの汚れになった。
それが面白くて、少年は声をあげて笑う。
見たい。
もっと見たい。
部屋の窓を全開に開けるけれど、待てど暮らせど蛾も蝶も入ってきてくれはしない。蚊を潰したところで面白くもなんともないし、カラスを殺すには奴は警戒心が強すぎた。
待って駄目なら、こちらから行こう。
足音を立てぬように、そうっと台所に降りる。シンクの下から包丁を一本抜き出すと、タオルにくるんで外に出た。
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