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月が明るい。
まるでこれから自分がしようとしていることを歓迎しているかのようだ。気持ちが高揚し、自然と足取りも軽くなる。
いざ公園に着くと、何をしようか迷っている自分に気づいた。勢い良く出てきたものの、具体的な獲物を思い描いていなかったのだ。
こてん、と、首を横に倒す。そんな少年を見て、猫がにゃあと哭いた。
――なんだ、馬鹿にしてるのか?
急に腹の奥がふつふつと沸き立ち、我慢が出来なくなる。
ぐるりと首を廻せば、自分を嗤った猫がいた。生意気にも高貴そうな白い毛並みをして、赤い首輪をつけていた。
――あいつが、俺を。
にゃあ、と。
また、猫が哭いた。
それは母親が自分のことをけなしているときの声に似ていた。
とても煩かった。
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