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俊敏な動きで猫の尻尾を捕まえる。まさか捕まるとは思ってもいなかった飼い猫は、少年の腕の中で暴れた。爪を立て、頬を引っかく。鋭い痛みが走り、さらに怒りを冗長させる。強引に腹を抱き寄せると、その背に持っていた包丁を突き立てた。
ざくっ。
ぐちゃり。
肉が裂ける手応えがした。
ぎゃあ。
猫が一声、哭いた。
びん、と身体を跳ね上げて、痙攣を繰り返す。
それが面白くて、義春はもう一度、包丁を刺した。
ざくっ。
ぐさっ。
肉が裂ける。
真っ白だった毛が、朱に染まる。
血が飛び跳ねて洋服についたけれど、気にはならなかった。
それよりも、猫が悲鳴をあげて、血を撒き散らす様子が面白かった。
ただの肉塊となった猫は、いくら刺しても嬲っても哭かなくなって、少年の興味の対象から外れた。
ぽい、と、その場に猫を捨てると、今度は芝生の方へと歩いていく。奥では若い男女が脇目も振らずに腰を振っていた。
自分がこんなにも悩んで苦しんでいる時に、なんでこいつらは楽しそうに快楽を貪っているのだろう。あまりにも非情な現実に、少年の心は悲鳴をあげる。だから。
包丁を振りかざした。
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