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「なぁに真面目な顔で消えたテレビ見てんだ大池」
「いてっ」
後ろから丸めた雑誌で叩かれた。
剣呑に振り向くと、上司である的場大知が仁王立ちして大池を睨みつけていた。
「外に出ろ、働け、スクープ持ってこい! お前、それでも文春の記者だろ!」
「……すいませーん」
世を賑わすスクープでおなじみの『週刊文春』の編集部に籍を置く大池だったが、勤務して2年、未だに大きなスクープを撮ったことがなかった。
それが直属の上司である的場には面白くなく、焦りにもなっている、らしい。
――焦っているのは、俺もだっての。
「こんな時はアレだな。おーい、春山ー」
「なんですか?」
ショートカットの美人がくるりと椅子を反転させる。
若くして週刊文春のやり手記者、春山沙織だ。大池とは1歳しか違わないが、その撮ってくるスクープの数は星の数ほど違う。
「ちょっと後輩をしごいてくれ」
「了解っす」
にかっと沙織は笑い、鞄を持って立ち上がる。「行くよ、ひろくん」
大池は吐きたくなるため息を飲み込み、「わかりました」と言って鞄とカメラを持つ。
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