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スマホで会場を調べて、と言われ、調べる。大池と春山は電車で現地に向かった。売れない記者に、タクシーを使う金は、ない。
ガタンゴトンと電車に揺られながら、隣に立つ春山を見る。
綺麗に切りそろえられたショートカット。利発で大きな瞳。細い体躯。
体力勝負の業界に似つかわしくない、美女だった。どこかの雑誌モデルと言われた方がまだしっくりくる。
無遠慮にジロジロと見ていたのがバレたのか、じろりと睨まれてしまった。
「……スケベなことでも考えてた?」
「そんなはず、ないじゃないですか」
「やだ、ひろくんったら、ソッチの方?」
「なんでそうなるんですか!!」
思わず大声になり、口を手で覆う。
本当に、この先輩記者は口が達者というか、なんというか――
調子が狂う。
だけど嫌いになれないのは、きっと、自分が彼女の実力以上に努力を認めているからだろうな、と、大池は思った。
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