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パカーン、パカーンと景気よく打たれ続ける大森を、記者席から見つめている野々村結子と松本。
大森の顔は蒼白で、ランナーを出すたびにベンチの監督、風間貢一を不安そうに振り返る。風間は眉間に皺を寄せ、黙っているが頭から湯気が出そうな険悪さ。
余計に縮こまり、更に面白いように打たれる大森。塁は埋まりっぱなし、その上フォアボールを連発して、電光掲示板の得点は増え続ける。
「うわあ……これは大森、また二軍落ちッスね。今季これで四度目でしたっけ?」
松本は心配そう。
「フン……」
腕組みをし、面白くなさそうに見つめている結子。
試合後のベンチ裏、そそくさと帰り支度して出て行こうとする大森に、寄ってくるコーチ。
大森、ギクリとして見ぬふりをして早足になる。
「大森……残念だけど、明日から――」
「――わかってます。また二軍でしょ」
大森、コーチを振り返ることもなく歩き出す。
そこに現れる結子と松本。
他の選手達は、結子の姿に気付くや否や、潮が引くようにサーッと逃げていく。
「例のブログの『激辛キッコ』だ」
「食いつかれるとボロクソ書かれるぞ」
結子は気にせず、大森の行く手を塞ぐ。
「えらいピッチングでしたね、大森さん」
大森は顔を歪め、結子を押しのけて歩いていく。その背中に結子は言う。
「マウンドでおろおろして監督を見る顔――ママを探す赤ん坊みたいでしたよ」
大森の背中がカッと怒りに燃える。だが大森は振り返らず、駆け出していく。
「キ、キッコさぁん、言い過ぎじゃ……」
オタオタする松本と、気まずい記者達の中、結子だけが平然。
そこへ不機嫌な風間が現れて、記者達がどっと流れ、取り囲む。
「監督、今日はピッチャーが先発も中継ぎももう一つでしたね」
「打つ方も惜しかったですけど」
風間がジロリと記者達を睨む。
「――もう一つか……惜しかったか。10点取られてこっちは1点しか取れなくて、そう見えるか」
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