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「……? でも風間監督って、どんなときもキッコさんのインタビューだけには答えてくれます……よね?」
マスターと松本が顔を見合わせ、二人して小指を立てる。
「まさか、コレ?」
松本の頭をどつく結子。三杯目の皿も一気に空にして立ち上がる。
「行ってくる!」
「ど、どこに……」
「大森の過去の取材」
言い終わる前に飛び出して行った結子を、慌てて松本は追っていく。
◇◆◇◆◇◆
高校で、教師や野球部監督に話を聞いている結子と松本。
大学で、野球部の練習の合間に、監督や選手に話を聞いている結子と松本。
そして遅巻電器株式会社のロビー。
ソファで向かい合っている結子、松本と、社員の上っ張りを着た加藤。
「オレの部下だったとき? マジメでしたよ、大森は」
ヘラヘラと笑う加藤。
「たとえて言うなら、ホームランは狙わずこつこつ当てていくって感じ」
「つまり、仕事は地道にこなしてた、と」
「そう、それ。社会人野球はさ、時間内は仕事やらなきゃならんでしょ。あいつは事務なんかも嫌がらずにどんどん受け入れてたよ。たとえて言うなら、ファールでも全力で追いかける感じ」
「……つまり、野球以外のことでも積極的に頑張る努力家、と」
「そう、それ」
加藤、満足げにうなずいている。松本もうなずく。
「誰に聞いても大森は好青年て話ばかり。いいヤツなんですねえ」
「いいヤツ過ぎて心配だよ。周りに気を遣ってばかり。たとえて言うなら――」
「たとえはもういいですから」
そこへ、OLの井川南美がやってくる。
「課長、須加物産様からお電話で、担当の方が異動になったので後任を紹介したいと……」
「お、わかった。リリーフに交代ってわけだな」
「りりぃふ……?」
笑顔を崩さないが、明らかにわかっていない様子の南美。
助け船を出す結子。
「野球でピッチャーの引継ぎのことをリリーフって言うんですよ」
「あ、そうなんですか――」
結子と南美の目が合う。お互いを凝視する二人。
「――結ちゃん?」
「え……」
嬉しそうになる南美の顔と対照的に、結子は苦い顔。
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