サブマリン、応答せよ

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「じゃ、大森は? 一緒に仕事したことあるんでしょ? 社会人野球からプロへ行くような野球の専門家と」 「大森さん? うん……事務仕事が一緒なだけだったから、野球がどうとかはよくわからない。けど、努力家で一生懸命なことにかけては一番な人だったよ。で、そういう意味では二番が後輩のさとみちゃんで、三番が恵梨香ちゃん……」 結子、げんなり。ジュースのストローをくわえ、意地悪く南美を見る。 「キャッチャーっていうのはね、昔『ドカベン』てマンガがはやったでしょ。あの主人公のポジションなのよ――すごい大食いで太ってる」 「えっ。私太ってるって言われたってこと?」 ショックを受ける南美に、涼しげな顔でジュースをすすりあげる結子。南美はそれでも納得してうなずく。 「そうかあ。痩せないと部下を持つ女性上司としてはカッコ悪いって意味か……」 「え?」 南美、迷っている様子で結子を上目遣いで見る。 「……昇進を考えてみないかって言われてるの」 「あ、そう」 興味なさげにジュースをすすり終わる結子。 ◇◆◇◆◇ ファーム(二軍)のゲームが行われている球場。閑散とした観覧席で、結子と松本が見ている。風で降りかかるグラウンドの土煙に、ゲホゲホ咳き込む二人。 「ええっ? そんな意地悪言ったんですか? Missキャッチャーなんて、どう考えても太ってるって意味じゃないでしょ」 「信じる方がアホなのよ」 「カワイソ……あんな和み系な感じのコ、いじめるなんて」 「嫌いなのよ、『悩んでます』ってポーズを取れば周りが手を差し伸べたくなるタイプって」 「キッコさんとは真逆――」 ポカリと殴られる松本。 「――キッコさんは差し伸べちゃうタイプって言いたかったのに……」 フン、とグラウンドを見る結子。 大森が投げている。しなりのあるアンダーハンドから繰り出されるボールに、バッターは内野ゴロや空振りの連続で試合終了。 大森の完封勝ちに、グラウンドの選手達が歓声を上げる。キャッチャーの高橋朋貴を始め、内野手、外野手、そして二軍監督やコーチ達が大森の肩を叩いて祝福。 マウンドから引き上げてくる大森を迎える結子。
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