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「大森さん、どうして一軍でもそうやって投げられないんですか?」
ムッとして、答えずに行ってしまう大森。
めげる様子もなく、コーチや監督に話を聞いて回る結子。そして松本と合流。
「大森、復活ですね。この様子じゃまたすぐ一軍でしょ」
「けどすぐまた二軍に落ちてくることの繰り返し。理由が二つだそうよ。一つはあの気の弱さ」
「監督にビビってるって――まあ、風間監督にビビらない人間ってあんまりいないと思うけど」
「大森は特に自己評価が低くて、せっかくいいものを持ってるのに、その力を自分で目減りさせちゃうらしい――つまり自信がないのね」
「日本人にありがちなタイプですね。もう一つは?」
「アンダーハンド特有の、あの遅いボール。コーチによれば、本人は速くしようと必死らしいけど」
「へえ……アンダースローでも、頑張れば150㎞の剛速球とかになるのかなあ」
「そりゃあ無理だってば。だからコーチはね――」
コーチが大森に手を振るのが、結子と松本の目に入る。
「大森、明日からまた一軍へ来いってさ」
大森、嬉しそうな顔になるが、すぐに不安げな表情に。
「――今度また失敗したら……」
ちょうどキャッチャーの装備を外し終わった高橋が、バアンと大森の背中を叩く。むせる大森。
「大丈夫だよ、頑張って来いよ」
「今度こそ一軍に残れるように作戦を練ろう。配球を考えよう」
大森の周りに激励が集まってくる。
「フン……あの女流に言えば、心臓の弱さじゃ大森が一番――てとこね」
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