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教室に戻ると人影もまばらで、雪絵もすでに帰る支度をしていた。
「どうしたん?結構遅かったけど」
「ごめん、今日ちょっと先帰るね」
「え、美希??」
私は雪絵の方も見ないで支度を済ませ、足早に教室を出た。追いかけられては困る。今、誰かと話したらせっかくせき止めた何かが、一気にこぼれ出てしまいそうだった。
下校する生徒の間を縫って駐輪場まで行く。
自分の自転車にカギをさし、カバンをカゴに放った。サドルに跨って思いっきり漕ぎ出した。
このまま遠くに行ってしまいたい。
下を向いたらもう、顔を上げられなくなってしまいそうだった。向かい風を顔いっぱいにうけて、熱くなる目の奥を冷やしたかった。
正門を出ると道は3つに分かれている。
左の道は車一台分通れるかという道幅で、そこを抜けると市街地になる。私はいつもそこから帰った。
真ん中の道は正門の幅と同じくらい、道幅が車2つ分だったから、市街地から来る人で車を使う人はここからきた。あとは先の方に港があって、多くはないけど地元の人はここから来ていた。
右の道は自転車が通れるくらいの幅しかなく、林の中みたいに両側から木が生い茂っていた。あんまり行ったことない方面だったけど、林を抜けるとずっと海に沿って堤防が続いていた。
私は林の中を漕ぎ出した。
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