2度目の、夏

7/42

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
今日からテスト期間だ。 今日と、土日を挟んで月曜火曜まで。 昨日裕介にもらった髪ゴムで1つに髪をまとめて気合をいれた。家から学校までは自転車で40分くらいで、いつもは夏の暑さに髪が張り付いていたけど、今日は首元がスッキリして清々しかった。 「美希おはよう!あれ、その髪どめどうしたん?」 教室に着くと後ろの席の雪絵が1番に気づいた。 「テストだから気合い入れてきたんだ」 「そんじゃいい点取れるんやろうねぇ」 「うーん、それとこれは別かな!」 「なんじゃ~」 2人笑いながらどちらからともなく1時間目の数学の教科書を出して、問題を出し合った。 間も無くしてテストが始まり、初日の数学と社会はつつがなく終了した。 「どうやった~?」 「まあまあかなぁ…」 「美希がまあまあっちゃあ、よかできた言うことやろ?」 「そんなことないよ!」 実際、雪絵の方が頭もいいし、今回も私より点数が高そうなのは口頭での答え合わせで明らかだった。 「雪絵それ嫌味っていうんだぞ~」 「まあまあ、あ、ほら美希。先生んとこ持ってくんじゃろ!」 雪絵は教卓の上を指差した。 そこには数学のプリントの山が積まれていた。テスト用に出されていた提出物である。 「ああ、そうだった!」 私は数学の教科係で、提出物を職員室まで持って行く任務があったのだった。雪絵とのやりとりはそこで終えて、ひとまずプリントを運ぶことにした。 私達の二年生の教室は3階にあって、職員室は1階にある。積み上がったプリントを抱えていると前が見にくくて、階段を踏み外してしまいそうだった。 一歩一歩、右足を下ろして左足を揃えて、また右足を下ろして、と慎重に進んでいき階段の1番下に足をついたと思った瞬間、角から人が曲がってきた。 「おっと」 「わっ、ととと、わ、わ、きゃあ!」 曲がってきた男子生徒は私のことを軽々と避けたものの、私はバランスを崩してお尻を床に打ち付けてしまった。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加