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「すまん。大丈夫か」
「痛たたた…あ、いえいえこちらこそすいません」
お尻をさすりながら顔を上げると、なんとなく見たことのある顔だった。
「あ、えっと、吉沢くん?」
短くツンツンした黒髪に、よく日に焼けた筋肉質な身体つき。あんまり喋ったり笑ったところを見たことないけど、その見た目でクラスでも覚えやすい方だった。
「ん、ああ、同じクラスか?えっと…」
同じクラスの吉沢、何とか太郎くん。彼も私の名前を思い出せずに視線は宙を泳いでいた。
「すまん。顔はわかるけぇ…」
「山本、です」
「そうか」
それだけ言うと吉沢くんは階段を上って行った。
(ええ、なんか素っ気ないなあ。まあまだこっち来てから話したことない人が大半だしなあ…)
そう思いながら床に散らばったプリントをかき集める。すると、階段の上の方でバタバタと音がして、振り返る間も無く、目の前に吉沢くんが目の前に仁王立ちになった。
「え、あの…」
私がたじろいでいると、彼は勢いよくしゃがみ足元のプリントとを繊細とは程遠い手つきで拾い上げた。それを私の両手に乗せた。
「あ、ありが……とう…」
「おう」
真顔で私を見下ろし、彼はまた階段を上って行った。
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