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紺のくたびれた着物の袖で汗をぬぐりながら、雪は竹水筒を逆さにして水滴を口に落とした。
「もう水もない……」
川で水を汲んでから半日。
食べ物など、もう三日食べていない。
懐には小判が三枚あるが、これを使う訳にはいかない。
この三枚で豪傑と有名な立花雄造に仇討ちを頼まなければならない。
それまで死ねるものか。
雪は、飢えて乾いた体と棒のようになった足を引きずりながら進む。
先日、立花雄造が親の仇を肩代わりして大名の御曹司を手打ちにした話を聞いた。
急がなければ立花雄造は、捕まってしまう。
死罪になってからでは頼めない。
仇討ちが済んだならば、同じく死罪になっても悔いはない。
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