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きっと、この町にまだいるはずだ。
思えば私の両親は確かに人に恨まれても可笑しくない人たちだった。
武家と生まれたのに、灌漑を農民に課していた。
「将来のためだ。農民のためだ」
言葉では分かっていたが、父の考えに到底知るよしのない人々は重労働を強いる父を恨んでいた。
「いつか分かる」
そう言う父は、もういない。
どこの馬の骨とも分からぬ浪人集団が屋敷に火を付け、父と母を手打ちにし、私は体を汚された。
今でもおぞましく思う、私の中に入った異物の記憶。
そんなものを抱えて生きていくなら死んだほうがマシだ。
仇討ちさえ終われば、死んでかまわないのだ。
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