2人が本棚に入れています
本棚に追加
ここは展望台の屋上なので当然その先は足場なんて物はありません。私の立つ位置から半歩先は、空と海が混じる青の領域でした。
私はしばらくそこに立って、直射日光と額の汗を潮風が連れ去ってくれる感触を楽しんでいると、背後で重い扉が開く音が聞こえました。この展望台は放逐されてからだいぶ時が経つので、どこもかしこも扉はおんぼろでした。開けるたびにぎぎぎと音がするので誰か来たのかすぐに分かるのです。
私は空と海を見るのを止めて振り向くと、開け放たれた扉に寄っ掛かっている人がいます。日差しのせいか影になっているのでよく見えません。私は仕方なくコンクリートの高くなっている場所から降りると扉へ向かって歩きました。一歩近づくたびに姿が徐々にはっきりと確認できました。それはこの島で唯一、白銀の髪と紅い瞳を持つ男の子の姿でした。
「まだ明るいのに外に出て大丈夫なの?」
私が心配して彼に話しかけると、潮風に柔らかな銀の髪をなびかせた男の子はこくりと頷いて微笑みました。彼は島に住む子供たちの仲でも一際目立つ容姿をしていましたが、気性は同年代の男の子たちと違って随分と大人しい物でした。私は島に住む腕白な男の子たちが苦手ではありましたが、彼のことだけはすんなりと受け入れることが出来ました。
「君がここにいると思って……」
最初のコメントを投稿しよう!