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控えめにそういう彼の手元にはラムネの瓶が二本だけ入ったビニール袋がぶらさがっていました。
「私のために持ってきてくれたの?」
「今日は特に暑いから……君もバテてると思って……」
彼は少し困ったように微笑みながら、ビニール袋からラムネの瓶を一本取り出すと、私に向かって差し出しました。近づいてそれを受け取ると彼の髪の毛が濡れていることに気が付きました。
「プールに入ってきたの?」
「うん」
「体の方は大丈夫なの?」
「最近は少し調子がいいから外に出ても大丈夫だって」
「無理しちゃだめだよ」
「うん」
そんなやりとりをしてはみても、慣れない外出で疲れたのでしょう。彼は屋上の出入り口の壁に寄りかかると、少し辛そうに浅い呼吸を繰り返していました。
「ぬるくなっちゃう前にこれ飲みましょう」
私はそう言って彼の隣に行くと、ずるずると音を立てるようにして彼は座り込んでしまいました。私も彼の隣に静かに腰を下ろします。ちょうど二人がっすっぽりと収まるようにできた屋上の出入り口の影は、なんだか二人だけのためにあるようで、私は少し嬉しくなりました。
「んしょ」
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