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ラムネの蓋を押し込むと、カロンという音と共にビー玉が瓶のくびれ引っかかり、しゅわしゅわと気泡が踊り始めました。彼の方を見ると、どうも暑さですっかりまいってしまってるようで、ラムネの蓋を押し込むのにも難儀していました。なので私は今し方開けたばかりのラムネの瓶を彼に渡しました。
「ありがとう」
「どういたしまして」
私は彼からまだ開いていないラムネの瓶を受け取りそれを開けます。飲み口から外れたビー玉には、その向こう側の青い空と海がひっくり返って映っています。そんなラムネを飲んでいると、まるで空と海を飲んでいるような気分になりました。
「ねえ、今日はこれからどうするの?」
隣に座る彼の口から小さな言葉がこぼれます。私は特にすることもなかったのでどうしようかと考えていると、今まで吹いていた風がやみました。柔らかな磯の匂いが流れてこなくなると、隣に座る彼の方から仄かに塩素の匂いが漂ってきます。私は何気なく彼の方へ視線を向けると、壁に体を預けた彼は目を瞑っていました。
Yシャツの下には何も着ていないのでしょう。うっすらと白い肌が透けて見えます。すると私の心臓は、とくんと大きく動いてしまいます。
「暑いね」
突然彼が動き出して襟の辺りに手をやったので、私は少しびっくりして視線を彼から空に浮かぶ入道雲へ移しました。しばらく入道雲や波打つ海原を眺めていた視線を彼に戻すと、彼はすやすやと小さな寝息をたてながら眠り込んでしまっていました。
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