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「今日は大人たちも隣の島へ出稼ぎに行っていないから夜になっても遊べるよ」
私は彼にそう語りかけましたが返事はありません。どうやら彼の意識は深い夢に中へ行ってしまったようです。すると困ったことに、私の心臓はまたとくんと大きく動き出してしまいます。その不思議な感じを意識しないようにすればするほど、私の意志に反して心臓はとくんとくんと大きく鼓動を鳴らしていきます。そしてそれに伴って、私の視線ははだけた彼の首元に吸い込まれてしまいます。
彼の白い肌に出来た鎖骨の窪みを見ると、私の心臓はさらに大きく鼓動を打ち鳴らしました。どうして着崩れ、気怠げに眠る彼の姿を見ていると、こんなにも胸が高鳴るのでしょうか。私にはその理由がちっとも分かりませんでした。
そうしてよく分からない精神状態にどぎまぎしていると、海から轟と潮風が吹いてきます。少し強い風のせいか、彼の意識は少しだけこちらの世界に戻ってきたのでしょう。眉を八の字に歪めると、うっすらと瞼を持ち上げました。
「大丈夫? 体調悪いの?」
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