1,姉御-せんぱい-

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「お嬢ちゃん……一回痛い目みねーとわかんねーのか」 「忠告します」 相手の言葉が終わると同タイミング。 あたしは一言発した。 そして、クロスさせていた両腕を下げる。 「これ以上近付いたら──」 相手の目には、今のあたしがどう映っているのだろう。 あたしは男から視線を外さなかった。 沈黙が落ち、ゆっくり時が流れる。 相手は動かない。 静かに流れてくるそよ風。 それが、あたしの猫っ毛を靡かせる。 「──あたしは、あんたを殺すかもしれない」 その言葉を、相手がはっきり聞いていたのかどうかは分からない。 しかし、そのまま男はその場を動こうとはしなかった。 「にゃんにゃん♪」 猫の真似。 部室で先輩にやられたように、あたしも同じようにしてみた。 ──何故だろう。 男は一歩も動かない。 表情一つ変えなかった。 やっぱり、先輩みたいな美人じゃないとドキッとしないものなのかな。 「じゃあ、あたしはもう行きます。先輩にお遣いを頼まれていて。……それでは」 最後まで反応はない。 それを確認し、軽く会釈をする。 背を向け歩き出すと、何やら後ろから近付いてくる気配を感じた。 じゃあさ、 反応しろよ。 「……ふっざけんなくそガキ!! このままなめられてたまるかってんだ!! もう容赦はしねぇ!!」 あたしは歩めていた足を止める。 そして、少し天を仰いだ。 今日は天気が良い。 晴れだ。 暖かい。 何故か、そんなことをふと思った。 ──あたしは、あんたを殺すかもしれない
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