1,姉御-せんぱい-

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きちんと忠告はした。 暴力は良くない、と。 だって、絶対、誰かが傷付くじゃないか。 あたしは嫌なんだ。 〝──ごめんなさい……!──〟 昔のあたしの言葉が脳裏を過る。 やってしまったら、もう取り返しはつかないんだ。 〝──ごめんなさい……ごめんなさい……!!!!──〟 あたしはひたすら彼女に謝っていた。 〝──お前、猫みたいだな──〟 「殺されるのはどっちだコラァ!!」 その言葉に我に返る。 目を少し見開くと、男の拳は目と鼻の先にあった。 それでも尚、あたしは無表情で相手の目を見つめる。 こんな奴の拳なんて、どうでも良い。 そう。 どうでも良い。 ──何の意志も持たない拳なんて。 あたしは小さく口を開いた。 「その拳は、誰かを守るためにあるものだよ」 ──刹那。 男の拳は空を斬り、相手の視界にあたしの姿はない。 男は目の前であった出来事が理解できていない様子。 焦っているのか、混乱しているのか。 慌てて周囲を見渡していた。 「後ろ」 無表情を貫くあたしの瞳は、 金色に変わっていた。
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