1,姉御-せんぱい-

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あたしは、こんな先輩を見て思うことがあるんだ。 「あたしは先輩とは違います」 こんなに〝優れた人〟なのに 「美人じゃない。猫っ毛。背も低いし……」 どうして 「先輩は色々勿体ないと思います」 〝こんな出来損ないのあたしなんかといるんだろう〟 って。 あたしはセーターの裾をギュッと力一杯掴んだ。 出来損ない。 そんな言葉が、ぴったりだ。 「先輩は……やりたいこととか無いんですか。そりゃ、あたしは先輩に物凄く感謝しています。……だって──」 《バサッ!!》 あたしは先輩に勢いよく抱き付かれた。 そのまま身体が宙に浮く。 視界に映るものすべてが遅く感じた。 ──スローモーション。 そして、一緒にそのまま倒れた。 視界には天井と先輩が映る。 「かっわいぃれおにゃん♪」 「や、やめ……!」 先輩はあたしの言葉を遮った。 何故だろう。 歯を見せて笑顔になった先輩は、あたしの髪をくしゃくしゃに撫で回す。 「私にも、やりたいことの一つくらいあるよ」 優しく微笑む先輩を見て、少し頬が火照った。 先輩が立ち上がり、あたしも追いかけるようにして腰をあげる。 「というか、現在進行中だな」 「へぇ先輩、そんな難しい言葉知っていたんですね。ビックリしました」 「れおにゃん! 先輩をなめすぎだろっ!」 冗談はさておき。 「どういうことですか?」 あたしはきいた。 何かあたしに隠しているのだろうか。 それとも〝ゲーム〟とか言い出したら、許さない。 「勇士部! これがやりたかったんだ」 ゲームとか、そんな訳もなく。 笑顔の先輩を見て思った。 やはり、たくさんの何かを損している気がする。 自身のことよりも、 誰かを優先する考えの持ち主なのだ。 出会った頃から。 この人は。
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