1,姉御-せんぱい-

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──── 「れおにゃん、マネー渡すから飲み物ととんがりエベレスト買ってきてぇ~。お願ぁ~い」 いつも通りダラダラ過ごして、数時間が経った頃だった。 先輩が二人掛け用ソファーの上で俯せになって寛いでいた。 もちろん、ゲーム機を両手にしっかり持って。 おまけに子供みたいに両足をバタバタさせて。 「はぁ?」 「えぇ!?  冷たいっ! 冷たいぞっ!」 高速で先輩はこちらに顔を向けた。 驚いた表情を浮かべ、目をぱちくりさせる。 「何であたしが行かなきゃいけないんですか」 「だ、だって、今……攻略中のダンジョンが……」 「……はい?」 先輩は慌ててゲーム機に視線を戻した。 挙動不審。 ゲーム機を見ているようで見ていない。 視線が左右に動いていた。 「……あと、眼帯していたら視界が狭いかなぁって」 あたしは、先輩から視線を外す。 眼帯のせいらしい。 あたしは何も言わなかった。 「れおにゃんの大好物の和菓子買ってきていいからぁ~。みたらし団子~!」 もう一度先輩を見つめる。 少し考えて、溜め息とともに肩を落とした。 「わかりました行ってきます。和菓子はまた今度にします。近々、期間限定で数量限定の商品が発売されるらしいので」 外に出る支度を整え、ゲームに夢中の先輩の元へ向かう。 「あぁ~! 私のベッドにお金置いてあるから持ってっていいよ~ん」 本当にだらしがない、この人。 しかも、ベッドに財布が置いてあるならまだしも、お札が裸のまま放り投げてあるのだから信じられない。 再び溜め息を漏らしたあと、部室の出入口へ向かう。 「気を付けろよ~。れおにゃん、可愛いんだから~」 扉の前足を止め、ほんのり赤く染まった頬を人差し指でポリポリと掻いた。 この人は、不意にこんなことを言う時がある。 「……はい」 《ガチャン》 扉を出て、部室を後にした。 あたしは別に先輩の事を嫌っているわけではない。 ただ、本当に先輩はこのままで良いのかと、不安になる時がある。 こんなあたしと一緒にいて、本当に楽しいのだろうか。 こんなあたしと一緒にいて、一生に一度のこの時を無駄にはしていないだろうか。 《ドカッ》 学園の敷地を抜け、歩道を歩いていた時だった。 下を向いて歩いていたあたしは、正面から誰かとぶつかった。
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