【3】 祈り

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 実を言うと、あの時既に俺達は、互いを本当に愛しているのか分からなくなっていた。嘘をつけぬお互いの口から「愛してる」という言葉が消えたことに気付いていた。  あの祈りの言葉も嘘だったかもしれない。あんな美しい言葉に匹敵する心を、あの時の俺が持てていたとは信じ難い。  それでも、祈りを捧げた。あの言葉は、間違っていなかった。  …良かった。  光を、見つけられた。  この光さえあれば、少しずつ、真っ暗な過去を照らしていける。  俺はやがて、真っ直ぐ立つことが出来るようになるだろう。
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