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【2】 空洞
再会は突然だった。
「おや。少年ではないか。」
屋上の扉前。
俺は、人と話すのに疲れた時だけ此処に来る。此処は何処よりも静かで、何も考えず、ただ一人になれるからだ。
でも、こんなに寒くて居心地の悪い処で昼食をとる人が他に居るなんて、思いもしなかった。
「…昼食はいつも一人なんですか?」
大賀さんはパンを食べていた。聞きたいことは他にたくさんあったはずなのに、混乱して的はずれなことを聞いてしまった。
「いや。普段は人と食べる。だが、雨や雪の日には一人で居る方が好きなのだ」
その日は氷雨だった。
「…ひとりが、好きなんですか」
「ポエムかぶれの中坊みたいに、人数の『一人』を、孤独の『独り』と変換するんじゃないぞ。少年」
口の端を上げて、大賀さんは俺の方を向いた。
あの粉雪の日みたいに、せり上がってくるものがある。
「…俺の名前、覚えてますか?」
「もちろんだ。あれから数回卓球サーブのかけ声に使用させてもらったぞ。
桔平」
少しだけ笑んだ。
「隣り、いいですか?」
大賀さんは、手のひらを差し出した。
「どうぞ」
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