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「俺は……一人になっても、変わらず生きている自分が、許せなかった」
『君が死んだら俺も死ぬよ。君が居ない世界でなんて生きていけない。』
あの日の誓いを破ってしまった。世界で一番大切だった人に、嘘をついてしまった。
「別れてからも、疑問ばかりが巡った。あの別れは本当に正しかったのか…そればかり」
俺は彼女を愛しすぎた。彼女さえ居れば、他の命などいらないと思った。そしてそれは、多くの命を護る世界で生きていく宿命を与えられた俺達に、歪みを生んだ。
生きる為に俺達は別れた。互いを幸福に生かす為に、俺達は別れた。
けれど日が経つにつれて目につくのは、彼女と感じた眩しい幸福の残像。その残像にすら及ぶことが出来ない現実。
人は過去と現在と未来を同じだけ抱いてようやく真っ直ぐ立てるというのに、俺は過去を全て失った。現在と未来は形だけのものとなった。一日進む度に、かかとから後ろが崩れていくようだった。
日々広がりと色を失っていく世界に生きる醜い自分。そんな自分でも生きているのなら、せめて孤独でなければならないと思った。
でも……それは間違っていると、言ってくれた人が居た。
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