時の風穴

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 *  気がついたときには、わたしはかたい地面の上によこたわっていた。でも、どこも痛くない。 (そういえば、風が巻きあがって、受けとめてくれたような……)  あたりは妙に明るかった。  ヒカリゴケが一面を青く照らしている。  わたしのとなりに透夜が倒れていた。 「透夜! ちょっと、大丈夫?」 「……いてて……おれ、死んだのか?」  と言いつつ、ふつうに立ちあがる。どうやら、無事らしい。 「あれ、生きてるな。ケガもほとんどしてないみたいだ。何が起こったんだ?」 「風が……」  そうじゃない。  あれは瑠璃だ。瑠璃が助けてくれたんだ。  でも、瑠璃は言った。  僕を殺したのは君じゃないと。  つまり、瑠璃はやはり、すでに死んで……。  わたしは、怖かった。  それを見るのが。  瑠璃はここにいる。  あの崖からつきおとされて、死んだのだとしたら。 「お——おい、夏帆」  透夜の声がふるえている。  わたしの肩をつかんで、ぐいぐい、ひっぱる。 「見ろよ。あれ——」  見たくない。  でも、見なければ。  それは、ずっと探していた人。  いつか、もう一度、会いたいと願っていた人。  わたしは心を決めて、透夜の指さすほうを見た。  あたり一面、青い光のなかに、瑠璃がいた。  子どものままの瑠璃が。  あのころと寸分たがわぬ姿で、それは眠っているように見えた……。
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