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気がついたときには、わたしはかたい地面の上によこたわっていた。でも、どこも痛くない。
(そういえば、風が巻きあがって、受けとめてくれたような……)
あたりは妙に明るかった。
ヒカリゴケが一面を青く照らしている。
わたしのとなりに透夜が倒れていた。
「透夜! ちょっと、大丈夫?」
「……いてて……おれ、死んだのか?」
と言いつつ、ふつうに立ちあがる。どうやら、無事らしい。
「あれ、生きてるな。ケガもほとんどしてないみたいだ。何が起こったんだ?」
「風が……」
そうじゃない。
あれは瑠璃だ。瑠璃が助けてくれたんだ。
でも、瑠璃は言った。
僕を殺したのは君じゃないと。
つまり、瑠璃はやはり、すでに死んで……。
わたしは、怖かった。
それを見るのが。
瑠璃はここにいる。
あの崖からつきおとされて、死んだのだとしたら。
「お——おい、夏帆」
透夜の声がふるえている。
わたしの肩をつかんで、ぐいぐい、ひっぱる。
「見ろよ。あれ——」
見たくない。
でも、見なければ。
それは、ずっと探していた人。
いつか、もう一度、会いたいと願っていた人。
わたしは心を決めて、透夜の指さすほうを見た。
あたり一面、青い光のなかに、瑠璃がいた。
子どものままの瑠璃が。
あのころと寸分たがわぬ姿で、それは眠っているように見えた……。
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