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「うおーー、最高にカワイイ!」
「マジだ、地上に降りた天使、俺の眼を疑うぜ!」
「ホレたホレた、本気でホレた! ボクちんの彼女にしたる!」
同時に男達が吠えた。野獣を彷彿させるような荒々しい咆哮。野太い腕を天にかざして、狂気の視線を向けている。
それで少女はようやく気付いた。……動物は彼らの方。自分はその檻の中に迷い込んだに過ぎないのだと……
そしてそれは始まりに過ぎなかった。獲物を見つけた野獣は、それを奪うために、死に物狂いの闘いを始めるのが自然界の摂理だから。
「あん、てめーなにいってんだ? あれは俺の獲物だぞ」
「馬鹿言えや、俺が先に見つけたんだ」
「ふざけた台詞、こいてんじゃねーぞ。それ以上調子こくなら、表に出ろや!」
幾多の野獣が、互いを敵と見なして口論を始める。
「落ち着きなさい、あなた達! あまり騒ぐと停学ですよ!」
杉田がビシバシと鞭を鳴らして鎮めようとするが、それは一向に治まらない。多くの野獣はいがみ合ったまま。まさにクラス全体を巻き込んでの一触即発状態。
「あっ、えっ?」
少女は、もはや生きた心地さえもしなかった。
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