真っ白なキャンバス

5/9
前へ
/9ページ
次へ
「うおーー、最高にカワイイ!」 「マジだ、地上に降りた天使、俺の眼を疑うぜ!」 「ホレたホレた、本気でホレた! ボクちんの彼女にしたる!」  同時に男達が吠えた。野獣を彷彿させるような荒々しい咆哮。野太い腕を天にかざして、狂気の視線を向けている。  それで少女はようやく気付いた。……動物は彼らの方。自分はその檻の中に迷い込んだに過ぎないのだと……  そしてそれは始まりに過ぎなかった。獲物を見つけた野獣は、それを奪うために、死に物狂いの闘いを始めるのが自然界の摂理だから。 「あん、てめーなにいってんだ? あれは俺の獲物だぞ」 「馬鹿言えや、俺が先に見つけたんだ」 「ふざけた台詞、こいてんじゃねーぞ。それ以上調子こくなら、表に出ろや!」  幾多の野獣が、互いを敵と見なして口論を始める。 「落ち着きなさい、あなた達! あまり騒ぐと停学ですよ!」  杉田がビシバシと鞭を鳴らして鎮めようとするが、それは一向に治まらない。多くの野獣はいがみ合ったまま。まさにクラス全体を巻き込んでの一触即発状態。 「あっ、えっ?」  少女は、もはや生きた心地さえもしなかった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加