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所詮この世は力こそが全て。強き者が支配して、弱者はその足元にひれ伏すだけ。それさえも叶わぬ者は、強き者の犠牲になるしかないのだから。
しかし地獄に仏とはよく言ったものだ。獣じみた集団の中にも、正義を重んじる人物はいる。
「御主ら、こんな状況で女子(おなご)を奪うために、戦(いくさ)でも始めるつもりか? 武士の風上にもおけん輩よ」
窓際後方から低い声が響き渡った。それに呼応して野獣達が身動きを止める。
「おなご? いくさ?」
同じく少女も、その方向に視線を向ける。
そこには他とは趣の違う、異様な集団が集結していた。制服ではなく様々な衣服に身を包む集団だ。青地に白の衣服や、車掌のような衣服の者も見受けられる。
「女子を見て発情とは、日本国の未来は暗いものだのう」
その中央で堂々と腕を組むのは、浅黄色にだんだら模様、いわゆる新撰組の羽織を着た生徒。腰には大小の刀を携えている。……よくは分からないが、噂に訊くお侍さんだろう。
「そうだな。そのゴン太の意見には俺も賛成するぜ。そんなんで男としてどうなんだろうな」
今度は別の生徒が言い放つ。机の上に座り込む、短い銀髪の生徒だ。数人の仲間と共に、バイク雑誌に視線をくれていた。
「ゴン太と呼ぶな。拙者ひじか……」
ムカつき加減に言い放つお侍さん。どうやらゴン太という御方らしい。
一方のモヒカンは悔しげな表情だ。
「くっ、拓未、何故お前がウチのクラスにいる?」
言って銀髪を睨み付ける。
「ははっ、仲間と雑誌を見てたら、クラスに戻るのを忘れていたのさ」
笑顔で言い放つ銀髪。どうやらこのクラスの生徒ではないようだ。ピョンと机から飛び降りると、教室のドア目掛けて歩き出す。
「ここが教室だったことを感謝しろよ。戦場で出会えば、てめぇみたいな外道、完全に始末してるところだ」
そしてその場を後にした。
モヒカンはなにも言わない。プルプルとこめかみを震わせて、無言で着席する。
あの拓未と呼ばれた生徒、少女からすれば立派な人物に思えた。髪の毛が銀髪ということは、英国貴族の末裔なのだろう。
「感謝致します、ナイト様」
敬意と誠意を込めて、消え去ったドアに深々と頭を下げた。
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