真っ白なキャンバス

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 窓から吹き込む風で白いカーテンが揺らめく。朝の光が射し込んでキラキラと輝きを放っていた。  これが少女の新たなるスタートの一場面だった。長い人生だ、時には新たなる旅立ちをせねばならぬこともある。今までとは180度違う人生かもしれない。憂いや悲しみ、苦しみや戸惑いの方が多いかもしれない。しかしそこで躊躇えば、その先には進めない。……そこで踏みとどまれば、未来など完全に闇の中。  確かに不安はある。それでも内に秘める希望の方が大きかった。  少女の胸の奥にあるのは、まだなにも描かれない真っ白なキャンバスだ。なににも汚されていない純白のキャンバス。  純白ということは、単なる無知に他ならない。様々な絵の具で塗りたくっていくことが、少女の今後の課題でもある。  少女だっていつかは大人の女性へと変貌する。いつかは輝きを放つのだ。希望という鮮やかな絵の具で全てを包んで。サナギの殻を脱いで、鮮やかに空に飛翔する為に__
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