2話 初恋

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ドアをノックするのも緊張する。 な、なんて言おう? とりあえず、朝の痴漢の事。 …頭痛いとか言った方がいいのかな? わかんない。けど、ノックした。 「はい」 「し、失礼しますっ」 ひゃあ!声が裏返った! ドア開けて、中へ入った。 「どうかしたの?…って、君、朝の電車の…」 私、金縛りみたいに動けなくなってた。 「あの!あのっ…あの…」 頭が真っ白。…何言おうとしてたっけ? 「どうしたの?…とりあえず座って」 白石先生がイスを出した。 右手右足、左手左足、一緒に出して歩いてイスに座った。 「あの、今朝、電車で…」 「…うん。別に気にしないで。…逆に聞きたいんだけど、えーと、名前は?」 「2年の…川崎麻衣子です」 「川崎さんね。…いつもあんなに痴漢にあうの?」 「…はい」 先生か。でもまた会えた。今目の前だ。 嬉しい! 「で、気になったんだけど…何で抵抗しないの?イヤがったりしないの?」 え?おかしいのかな? 意味がわかんない。 「どうして抵抗するんですか?」 「えっ?好きでされてたの?」 「好きでされてはいません。…ただ、何で抵抗するの?」 「ちょ、ちょっと待って。…好きで痴漢されてるわけじゃなくて、抵抗しないって…待って待って」 先生が何かの本を出した。 どこかを必死に読んで、しばらくしてから覚悟したかのように聞かれた。 「変な事聞くよ。…でも正直に答えて?」 「はい」 「……誰かに性的に、何かされた?」 心臓がバクバクした。 いや。いやだ。 バレちゃう…。秘密。お兄ちゃんとの。 勝手に涙が零れてた。 「…それは相手は誰?…多分身近な人?」 「……失礼します!」 保健室を飛び出た。
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