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「麻衣子、2度と家に戻るな。……幸せになれ。……貴史は働く意思はない。多分、ほとんどの貯金を食い潰してるだろう。…お前に金銭的要求してくるようになるだろう。……その前に、戸籍から抜けろ。……あの家を捨てろ……幸せに、なってくれ……」
涙が零れた。
わかんない。わかんないけど、1番、親らしいセリフ、初めて聞いた気がした。
「…わかりました。今はツアー中です。…準備ができたら彼女を責任もって貰っていきます…」
「倉坂さん、…ありがとう。……麻衣子、幸せにな…」
「お父さん…」
ドアがノックされた。森川さん。
「すみません。…そろそろ出ないと間に合わなくなるので…」
「さ、麻衣子、行きなさい。…お前が掴んだ幸せなんだろう?…頑張るんだぞ………倉坂さん、麻衣子をよろしくお願いします」
と、お父さんが頭下げた。
森川さんに急かされて、2人で病室を出た。
車に戻って、シキさんに抱っこされて泣いた。
「Rey、……お父さんだけはまともになったと思う。…本当に籍だけ入れておこう」
「うん…うん…」
森川さんに話した。
親子間の絶縁は戸籍から『分籍』とかいうくらいしか本当に方法がないみたいで、絶縁状とかも親子間である以上、何も効力ないらしい。
本当に新たに戸籍を作るのは『結婚』して新しい戸籍を作る事だけど、親子関係は養子縁組などがないと無理との話。
森川さんが、お父さんに養子縁組の話をして、戸籍を抜いてからの『結婚』がいいと判断した。
森川さんはすぐに動いてくれて、森川さんの親族の方と私が養子縁組する事になった。
それはお父さんがすぐに書類はすべて書いてくれて、事務所の弁護士さんも立ち会い、郵送や連絡はすべて弁護士さんの元で正式に行われて、私はお母さんとお兄ちゃんに知られないうちに
『森川 零』
と、名前が変わった。
Reyが0なの、嬉しかった。
私はゼロから始められた。
もう『川崎 麻衣子』はいない。
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