第一章

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 そんな、まさか───・・  あの写真とメッセージが入った封筒や贈り物の数々はどう説明するんだ?  幽霊にそんな事が出来るとは思えない。  けれど迅鵺は、この男が醸し出す雰囲気や、迅鵺を見詰めるゾクリとするような、全身舐め回されてるような感覚の視線には覚えがあった。  意思とは裏腹に、身体は動かないが頭の中はパニックに陥ってしまう。  それなのに、この男に与えられる快楽に、徐々に身体が応えていく──・・  「────ふっ、うっ・・」  耳元で呟いた唇を、そのまま耳に押し付けて息を吹き掛けると、耳の輪郭に沿って舌先が這う。  知らない男なんかに、こんな事をされて気持ち悪い筈なのに、耳から脳へ、首筋を通り下腹部へと体内を流れるような熱いうねりが込み上げてくる感覚に、耐えきれず喘ぎ声とも言える吐息が溢れた。  そんな迅鵺の様子を見て、うっとりと嬉しそうに笑顔になると、迅鵺の唇を啄むようにキスをした。  ─────ふざけるなっ!  次の瞬間、迅鵺は男の唇に噛み付いた。  けれど、男は痛みを感じてるのか感じてないのか分からないくらいの無表情で、ポタポタと自分の唇から滴り落ちる血を手の甲で拭うと、その手を迅鵺の首へと押し当てた。  「あ“────く、くるっし──・・」  男は冷たい表情で迅鵺を見下し、少しずつ首を締め付ける力を強めながら言葉を落とした。  「駄目じゃないか、こんなに君を愛してるというのに噛み付くなんて・・お仕置きしなきゃね・・」
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