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「────なるほどな。まあ・・客の仕業だとは思うが、少しも手掛かりが出てこねぇってのは、気になるな。」
響弥の言う通り、過去のストーカーをしてきた客はすぐにボロが出た。
寮のマンションで待ち伏せされていて、部屋に入ろうとした所に現れたり、接客中での会話の節々から分かったり。
とにかく、何かしら犯人を特定できる事があって、大事には至らずに解決していた。
ただ、今回に関しては本当に客の仕業なんだろうか?
迅鵺は、あの男の事が気掛かりでしょうがない。
響弥は、その事を知らないから当然のように客の仕業だと思っている。
だけど、迅鵺はあの男の事だけは話せなかった。
あんなっ──・・あんな事、恥ずかしくて言える訳ねぇだろ!?
男に組み敷かれたとはいえ、迅鵺にはプライドがある。
況してや、ずっと憧れてきた、今では一番慕ってる響弥に話せる訳がなかった。
迅鵺は、親身になって話を聞いてくれている響弥に少し後ろめたいような気持ちになる。
けれど、この不可解な事だらけの気味の悪い状況に、一人ではもう耐えられなかったのだ。
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